2005年4月29日金曜日

なぞなぞ(文学・博物系)「“トチメンボー”の正体はいったい何なのでしょうか?」



今日勉強したばかりの知識です。夏目漱石の『吾輩は猫である』で迷亭先生が高級レストランに入って「トチメンボー」を出せといってボーイを困らせる話があります。もちろんそんな料理は存在せず迷亭のでっち上げなのですが、問題はどうして漱石が「トチメンボー」なる名前を思いついたのかという点。いやどうも岩波書店の注釈とは違うみたいだぞ!

岩波書店の注釈は次の通り:
四七13 トチメンボー 四九13に出る俳人の名栃面坊をもってきて、西洋料理の名らしくかついだもの。(四八3 メンチボー mince ball メンチボールのこと)

そうか、俳人の名前なのかと納得していたが、今日出くわした文章がこれ。山田宗睦『花 古事記』p372:
トチの実を麺にする棒を、とちめん棒といった。トチを蒸してさめないうちにとちめん棒でのばさねばならないところから、いつしかあわて者をとちめん棒と呼ぶようになった(俚言集覧)。かほみせのその人よりもそばそばでとちめん棒の手うち連中、という狂歌もある。平賀源内の風来山人集にも、十返舎一九の東海道膝栗毛にも、でてくる。あの弥次郎兵衛が、栃面屋弥次郎兵衛なのである。

漱石は講談が大好きだったから、俳人の名はおまけであって、むしろこっちの方を念頭に思いついた言葉かも知れない。いやそうに違いない。

花 古事記―植物の日本誌
山田 宗睦
八坂書房 1989-08


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この本、他にもいろいろ発見がある。おすすめ。
 

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